自動車業界では、ビジュアライゼーションや商業プロジェクトを推進するために、ますます Unreal Engine (UE) などのリアルタイム ソリューションを活用するようになっています。自動車コンフィギュレーター サンプル は、Epic Games のベスト プラクティスを使用して、自動車業界の 3D ビジュアライゼーション アーティストが一般的に使用する車両コンフィギュレーターを作成するためにビルドされました。
自動車コンフィギュレーター サンプルでは、次の機能を示します。
自動車コンフィギュレーターの使用方法
サンプルをダウンロードする
このプロジェクト サンプルは、 Epic Games Launcher の [Unreal Engine] セクションにある [Samples (サンプル)] タブから無料で入手できます。サンプルの作成で使用されている他のアセット パックは、[Marketplace (マーケット)] タブで無料公開されています。
Epic Games Launcher を開いてサイドバーの [Unreal Engine] ボタンをクリックします。次に、[Samples] タブを開きます。
[UE Feature Samples (UE 機能サンプル)] まで下にスクロールして、 自動車コンフィギュレーター サンプルを選択します。[Free (無料)] ボタンをクリックして、このサンプルを自分の格納場所に追加します。
[Create Project (プロジェクトの作成)] ボタンをクリックし、画面に表示される手順に従ってサンプルをダウンロードしたら新規プロジェクトを開始します。
Unreal Editor で新規プロジェクトを開きます。
このプロジェクトでは、次のプラグイン (デフォルトで有効になっている) が必要です。
ムービー レンダー キュー
カラー補正領域
コントロールリグ
バリアント マネージャー
これらを有効にした場合は、エディタの再起動が必要です。
ユーザー インターフェースを操作する
自動車コンフィギュレーターは「Product Configurator」テンプレートをベースに使用してビルドされています。バリアント マネージャー を使用することで、Audi A5 のカスタマイズに使用する バリアント と呼ばれる保存済みのスタティック メッシュのコンフィギュレーションを選択することができます。
コンフィギュレータは、画面の下部にあるインターフェース ボタンを介して制御することができます。
番号 |
説明 |
---|---|
1 |
コンフィギュレータのモード |
2 |
コマーシャル モード |
3 |
車の塗装色 |
4 |
ホイールのデザイン |
5 |
トリムの色 |
6 |
レザーの色 |
7 |
シートの内装デザイン |
8 |
パス トレーサーを切り替える |
9 |
Tスクリーンショットを撮る |
10 |
ミュート / ミュート解除 |
11 |
カメラ視点 |
自動車コンフィギューレーターには白く点滅する円形で表示される焦点があります。これは Unreal Engine のブループリントベースのアニメーション制御システムである コントロールリグ を使用してアニメートされています。
ドアの開閉:車のドアの開閉を行います。
オープンカーの幌の開閉:いずれかの内部表示でバックミラーにあるルーフ制御スイッチをクリックして、オープンカーの幌を開閉します。
トランクの開閉:トランクを開閉します。
クラクション:クラクションを鳴らします。
エンジンの起動 / 停止:[Engine Start] ボタンをクリックすると、エンジンが起動または停止します。エンジンが開始すると、ダッシュボードのメーター、Audi Virtual Cockpit の表示がオンまたはオフとなり、フロント ライトとテール ライトが光ります。
コマーシャル ビューをレンダリングする
コンフィギュレーターの [Play (プレイ)] ボタンをクリックすると、カスタマイズした車両がコマーシャル モードに移行します。
コマーシャル モードでは、車両が独自のコマーシャルの主役となります。自動車のコマーシャルでよく見かけるように、いくつかのカメラ ショットを使用して車両を撮影します。コマーシャルは、次のインターフェース オプションを使用して制御することができます。
番号 |
説明 |
---|---|
1 |
停止 |
2 |
再生 |
3 |
一時停止 |
4 |
ビデオをレンダリングする |
シーケンサー を搭載したカメラはソルト フラッツを走り抜け、ホイールと内装をメインに映し出します。この自動車のコマーシャルではリアルタイムのライティングとシャドウに レイ トレーシング を取り入れています。また、ムービー レンダー キュー のランタイム機能を活用しており、ボタンを押すだけでお使いのコンピュータに保存できます。オプションのパス トレーサーの使用
バリアント マネージャー
自動車コンフィギューレーターは「Product Configurator」テンプレートを使用してビルドされ、バリアント マネージャーを使用して車両のカスタマイズに使用するさまざまなアセット コンフィギュレーションを格納します。
それぞれのコンフィギュレーション オプションは、バリアント と呼ばれるエントリにストアされます。各バリアントは、バリアントのアクティベーション時に変更されるアクタ上のプロパティを指し示します。バリアントはバリアント セットに配置され、データは BP_Configurator ブループリントによりユーザー インターフェースにオプションを入力するために使用されます。上の画像では、異なるトリム オプションが選択されると、バリアント マネージャーはその値を車両アクタの別のスタティック メッシュ コンポーネントに適用することがわかります。
バリアント マネージャーの使用方法の詳細については、「バリアント マネージャー」を参照してください。
Lumen グローバル イルミネーションおよび反射
Unreal Engine では Lumen グローバル イルミネーションおよび反射 システムを使用して、動的なグローバル イルミネーションおよびシャドウを提供しています。
自動車コンフィギューレーター サンプルでは、Lumen のディフューズの相互反射と間接スペキュラ反射の機能を使用して、ソルト フラッツ環境をタイヤ リムや車に正確に反映させ、Automotive Materials パックから使用したマテリアルのクリア コートの特性を最大限に活かしています。
Lumen を使用したレベルのライティングの詳細については、「Lumen」を参照してください。
パス トレーサー
パス トレーサー は、Unreal Engine のプログレッシブなハードウェアアクセラレーション レンダリング モードです。物理的に正確なグローバル イルミネーションとマテリアルの反射や屈折を生成するように設計されており、パス トレーサーを有効にすると、ほぼ設定を追加することなく、フォトリアルなレンダリングを実現できます。
パス トレーサーは、 シーケンサー および ムービー レンダー キュー と完全に統合されており、映画やテレビ品質のレンダリング出力に最適です。
自動車コンフィギューレーター サンプルでは、インターフェースからパス トレーシングをオンに切り替えることで、スクリーン キャプチャやコマーシャル モードでのレンダリングでフォトリアルな出力を実現しています。
パス トレーサーを自分のプロジェクトで使用する方法については、「パス トレーサー」を参照してください。
ボリュメトリック クラウド
このサンプルで使用されている ボリュメトリック クラウド は、物理ベースのクラウド レンダリング システムとマテリアル主導のアプローチを使用してソルト フラッツに表示される空を作成しています。
Epic Games チームは、ボリュメトリック クラウドを使用してソルト フラッツに美しさを加えながら、車の塗装に反射された光も表現しました。Volumetric Cloud コンポーネントはデフォルトのクラウド マテリアルのマテリアル インスタンスを使用して、こういったエフェクトを実現します。
ボリュメトリック クラウド システムの使用方法の詳細については、「ボリュメトリック クラウド」を参照してください。
Chaos Cloth ソルバ
自動車コンフィギューレーター サンプルは、クロス製のオープンカーの幌の物理的相互作用のシミュレーションに Chaos Cloth ソルバ を使用しています。
Epic Games チームは、エンジン内で直接クロス ペイント ワークフローを使用して、摩擦、コンストレイント、抗力、剛性などのさまざまなプロパティを割り当て、Audi A5 のソフトキャンバス製の幌の外観と感触を綿密にシミュレートすることができます。
Chaos Cloth ソルバとインエンジンのクロス ツールの詳細については、「クロス ツール」を参照してください。
コントロール リグ
コントロールリグ システムは、エンジンに直接リギング ツールとアニメーション ツールを提供するスクリプト可能なノードベースのリギング システムです。
この自動車コンフィギューレーターでは、Epic Games チームは 2 つの目的でコントロールリグを使用しています。1 つ目は、応用可能な車のスケルタル メッシュ バージョンを作成すること、そしてホイールやドア、トランクのアニメーションを作成することです。2 つ目は、オープンカーの幌のアニメーションを作成することです。
Audi A5 の場合、車の可動要素ごとにピボット位置を持つスケルトンを使用します。この方法で作業することにより、メインとなる車両ジオメトリを車両にバインドする必要がなくなり、スケルタル メッシュを素早く Unreal にインポートすることができます。インポート後、メッシュはブループリントに追加され、残りの車両コンポーネントはピボットにアタッチされ、実行時にスケルトンをコントロール リグにバインドします。これにより、DCC アプリケーションに戻ることなく、必要に応じてピボット位置を簡単に更新することができます。
クロス製のオープンカーの幌は、その複雑さにより、独自のスケルトンとコントロールリグを備えた別個のものとして作成されます。ステート マシンは幌が開いているか閉じているかを追跡し、コンフィギュレータ アプリケーションで選択された場合は適切な遷移アニメーションを実行します。
インエンジンでアニメートするためのコントロールリグの使用方法の詳細については、「コントロールリグ」を参照してください。
シーケンサー
コマーシャル モードを備える シーケンサー は、ユーザーがゲーム内のシネマティックスを作成できる堅牢なキーフレーム アニメーション システムです。
コマーシャル モードでは、車の構成可能な各種機能を紹介するために一連のレベル シーケンスがアニメートされたカメラで作成されています。Epic Games チームは ムービー レンダー キュー を使用してレベル シーケンスをレンダリングして保存し、ノンリニア編集プログラムを使用してそれらを組み立てています。その編集済みシーケンスを Unreal にマスター シーケンスとして戻し、オーディオを追加してカメラ、アニメーション、そして全体的な時間配分を磨き上げます。これらのシーケンスは、「CarConfigurator/Commercial/Sequences」フォルダに格納されています。
プロジェクトでのシーケンサーの使用方法の詳細については、「シーケンサー」を参照してください。
ムービー レンダー キュー
最終的なコマーシャル レンダリングを出力するために使用される ムービー レンダー キュー は、高品質なメディアをエクスポートできるエンジンの機能です。リアルタイム レイ トレーシングと併用すると、最終レンダリングで高度なアンチエイリアス、放射線状のモーション ブラーを利用することができ、レイ トレーシングで発生するノイズも削減できます。
Epic Games チームでは、ブループリントを使用してランタイム時のムービー レンダー キューを有効化します。これにより、コマーシャルの動画をコンフィギュレーターから直接レンダリングおよび保存することができます。
ムービー レンダー キュー機能の使用方法の詳細については、「ムービー レンダー キュー」を参照してください。
コンフィギュレータにアート アセットを追加する
新しいアート アセットを自動車コンフィギューレーターに追加するには、新規バリアントを Level Variant Sets に追加します。これは、マテリアルやスタティック メッシュ アセットと同様のプロセスです。次のサンプルで、コンフィギュレーターに新しい塗装色を追加する方法を説明します。
このサンプルの Audi A5 では、塗装、レザーおよびトリムのオプションに Automotive Materials パック を使用しています。次の手順で、インターフェースに新しい色を追加します。
新規マテリアルおよび必要に応じてテクスチャのサンプルを保存するためのカスタム フォルダを作成します。このためには、「CarConfigurator」フォルダを右クリックして [New Folder (新規フォルダ)] を選択します。新規フォルダに「Custom」と名前を付けます。
サンプル内で使用できない色を追加する場合は、 Automotive Material パック にあるツールを使用して塗装サンプルを作成するか、マテリアルをインポートして設定する必要があります。このサンプルでは、既存の塗装サンプルを複製して、編集します。テクスチャのインポートおよび新規マテリアルの作成方法の詳細については、「マテリアルの操作方法」を参照してください。
次に、「CarConfigurator/Shared」フォルダを開き、CarVariants Level Variant Sets をダブルクリックしてバリアント マネージャーで開きます。
新しい色がすべての必要なスタティック メッシュに確実に適用されるように、既存のバリアントを複製することもできます。塗装、トリム、または レザー のバリアント セットを開き、一覧の一番最後にあるバリアントを右クリックします。メニューで [Duplicate (複製)] オプションを選択します。
新規バリアントを右クリックして [Rename (名前変更)] を選択します。色に適切な新しい名前を付けます。
[Properties (プロパティ)] パネルの BP_AudiA5 をクリックして、車の プロパティ と 値 を表示します。[Values (値)] 列の値ごとに、ドロップダウン メニューをクリックして新しい色を選択します。ただし、SM_trunkDetails マテリアルは除きます。
SM_trunkDetails のマテリアルを変更すると、車のナンバープレートが変わります。
新規バリアントのサムネイル画像を設定するため、バリアントを選択して ビューポート カメラを配置し、新しいオプションを最適に表示させます。
次に [Variant Manager (バリアント マネージャー)] でバリアントを右クリックし、[Set from viewport (ビューポートから設定)] オプションを選択します。
エディタで [Play] ボタンをクリックして、サンプルをテストします。新規バリアントがユーザー インターフェースに表示されます。